年金生活
昔、戦時中の日本で軍隊が「贅沢は敵だ」と言っているとき、パリ帰りのデザイナー、中原淳一氏は小さな声で「贅沢はステキだ」と言われたそうだが、私も中原氏に賛成だ。
日本の人はよくこういうことを平気で言う。
「失業手当を受け取りながら酒やたばこに使う」
「生活保護を受けながらいいレストランでいいものを食っている」
どうしてそれがいけないのか尋ねたい。
失業手当をもらってたばこを吸い、酒を飲んでどこが悪い。失業手当を支給される人は働いているとき、税金なり保険料を払っていたのだ。手当ては払ったものの見返りだ。何に使おうと自由ではないか。
生活保護を受けている人が飲み食いや洋服に金を使う、私は大いに消費しなさいと勧める。働いていなくても受取る手当てでたばこを買う。すると、たばこ会社が潤う。そこで働く人に仕事ができる。酒を飲めば酒造会社や酒屋が儲かる。レストランでお金を使えば、店主もウェイトレスも、仕入先の食料品会社も仕事になる。日本のように財布の口をしっかり締めてしまっていては景気はよくならない。タンス預金をして消費しない人は国賊だ。
高尾慶子(エッセイスト)/イギリスの年金は極楽だ『文芸春秋20005・1』
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