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2004.12.19

自立のために個室は必要か

伸坊 昔はTVが何台もあるっていうのが、ステータスみたいだったけど、今はもう、子供部屋にTVもあれば、電話もある。そのうえ、近ごろはそれにパソコンが加わった。あきらかに、教育上よくなさそうですよね。TVやパソコンがいけないんじゃなく、親子が一緒の空間にない。

澤口 そうなんですよね。そんな環境では社会性が育ちようがない。個室でいくら勉強しても人間関係は学べません。そうなると、自我や社会性を司る前頭連合野が成熟できない。小学生のうちに個室を与えるなんで、ダメですね、もう。はっきり言っちゃいますでど、こんな住み方は、どう見たって、モンゴロイドの子育て戦略に反しています。進化に逆行する行為といっていい。だから子どもたちの社会性が育たないし、前頭連合野が成熟しないから、いつまでも自立できないんですよ。
伸坊 だけど、もともと、子供に部屋を与えるっていうのは、自立心を育てるとかってことでしたよね。乳離れを早くするっていうんで、赤ン坊の頃から別々に寝かせるのがイイ、ってことだったんじゃないですか?
澤口 それは大きな勘違いです。コーカソイドは初めからモンゴロイドよりも自立心が旺盛な傾向があります。もともと自立しようとする性質がある。だから子どもは子ども部屋で寝かせる、という戦略がとれたのであって、個室を与えているうちに自立が進んだわけではない。まったく逆の話なんです。
 私がアメリカにいたときの経験ですが、だれかの家を訪ねると、たいてい家族は全員リビングにいました。子どもも大人と一緒にゲストにきちんとあいさつして、あとはそのままリビングにいるんですね。「子ども部屋に行きなさい」なんて言われないです。それでいて大人の話には決して立ち入らないで、子ども同士そのへんで遊んでいたりします。そういう意味で自立しているのであって、部屋にこもってしまうわけではない。各自が個室に引っ込むのは眠るときぐらいなんです。
 しかも最近聞いた話では、私のこの経験はしつけの成功例みたいです。実際にはアメリカでも個室を与えることで親子の対話が減り、子育てに失敗する例が多かったんだとか。そうした失敗例をふまえて、今アメリカでは、リビングを広くとって家族と過ごす時間を増やそう、などといわれているようです。
 日本のLDKは、20年くらい前のアメリカの"失敗例"を真似しているようなものです。日本の住宅事情では、リビングといってもそれほど広くはなくて、家族全員集合したら食事をするのが精一杯。同じ空間でそれぞれに時間を過ごしながら家族が集うなんてことは、そもそもできませんからね。
伸坊 まったく逆のことをしてたんですね。自立に必要なのは個室じゃなくて、むしろ家族で過ごす時間と空間だった。

南伸坊×澤口俊之『平然と車内で化粧する脳』扶桑社2000年

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