アフリカみたいだ
人類が地球全体に広がっていった足跡を辿る『グレートジャーニー』を終えて感じたのは、人にとって「技術の進歩」というのは、実はそんなに大切なことじゃないということなんです。
例えば、道路事情の悪い国に時速200kmで走れるクルマがあっても無駄でしかない。最近の携帯電話にしても、私自身、マニュアルなんて読まないし、ほとんどの機能を使っていない。無駄をなくす、シンプルにするという方向に、何かヒントがある気がするんです。既に、地球全体のことを考えると、エネルギーはできるだけ使わない方がいい時代になっている。「速く」「大きく」ばかりではなく、蓄積された技術を、資源を使わない方法に結び付けるべきなのではないかと感じています。
世界中を旅してよく聞かれるのが、「どこに住みたいですか」という質問です。言い換えれば、世界の中で「楽園」や「桃源郷」に出合ったことはあるかということ。でも、人は、当たり前に言葉が通じて、慣れ親しんだ文化の中で暮らすのが最も幸せなんです。マイナス30℃の環境で暮らす極北の人達が、マイナス10℃の晴れた日に「アフリカみたいに暑い」と言っていたことがある。多くの日本人には「楽園=南太平洋の島」みたいなイメージがあるけれど、彼らにはそんな場所、灼熱地獄でしかない。人はつい自分の価値観を普遍的なものだと思い込むけど、60億の人間がいれば60億通りの「楽園」があることを、ちゃんと認めなきゃいけないんです。
関野吉晴/これ以上、速く生きてどうするの?『日経ベンチャー2004・12』
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