120年の入浴法
「地蔵の湯」に集まる湯治客は、重度のアトピー性皮膚炎に悩む人、持病の治癒を願う人、術後のリハビリに励む人など、目的や背景は各人各様。症状や体力にもよりますが、基本的に1日4回の時間湯を繰り返し、毒出し・体質改善・仕上げと段階を踏みながら、数ヶ月かけて湯治を行います。
「湯の中では誰もが平等。湯長の言うことは絶対。そんな厳しさに絶えかねて途中で脱落する人もいる。でも、治ることを信じて最後まで頑張ったおかげで難病が完治したと、感謝されるケースも少なくないんですよ」
そう語ってくれた湯長の井田さん自身、草津の湯に命を救われたひとり。28歳の時、バイク事故で大けがを負い、一命はとりとめたものの半身不随状態に。さらには病院の投薬過多による薬物中毒、内臓疾患、片足は切断寸前という状態でしたが、先代湯長の丁寧な指導のもとで必死の湯治を続け、奇蹟の復活を果たしたと言います。その後、草津へのご恩返しの気持から先代に弟子入り。厳しい修業を経て「地蔵の湯」の8代目湯長に就任したのは、平成15年のことです。
「症状や体力により、最適な温度と濃度の温泉で湯治してもらえるように、温泉を生かし、湯を作り込むのが私の仕事。こんなに小さな浴槽ですが、この中に40度から48度まで6段階の温度差を作り、4種類の濃度の湯に調整するんですよ。技の秘訣は何かって? それは門外不出です(笑)。先代は87歳の時に"目標は骨まで通す湯を作ること。だが、20年も湯長を務めてまだ道半ばだ"と言っていた。私なんぞはまだスタート地点に立ったばかり。120年の伝統が培ったこの入浴法をこれからもっともっと研鑚して、温泉療法の可能性を広げていきたいですね」と、井田さんは言います。
草津よいとこ、湯けむり旅情『mom2005・1』
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