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2004.11.02

三島のジーンズと皮ジャン

美輪 私、三島さんと話したことがあったんです。「肉体より精神だ、魂だ」ってね。だけど、そのとき、彼は「魂より肉体だ」と言ったわけ。もちろん、三島さんは本筋では魂とかそういうものを大事にする人なんですよ。

美輪 ところが、結局、肉体を小さいころからばかにされてきたから、とにかく肉体だと思うようになったわけ。「君は可愛いとかきれいだとか、小さいときからそうやってほめそやされてきた。だから、きれいだと言われてもうれしくなんてないだろう」と言うのよ。「そうよ。当たり前だと思ってるもの。こんにちは、さようならと同じ意味よ、私にとっては」と答えたんです。
 すると「君と僕は同じくらいの審美眼を持っている。同じ審美眼を持つ君は、自分の審美眼で許される範囲のものがいつも鏡に映し出される。ところが同じ審美眼を持ちながら、僕の見る鏡には許すべからざるものが映っている。それが自分の顔なんだよ。それを一生引きずっていかなければいけない人間の気持ちがわかるか」と、言われたの。
瀬戸内 そんなにみっともなくなかったのにね、あの人。
美輪 でも、彼は言われ続けてきたから、それがトラウマになっていて、自分の魂の目で自分の顔を見るような習慣がなかったんですね。学習院時代の小さいころからいろいろと悪口を言われて、曇った目で自分を見ちゃうしかなかった。
「フクワ」の一件があってから、ずっと音信不通になってしまってね。ところが、半年以上たったころ、いきなり電話で後楽園のジムまで呼び出されたんです。しかも朝。私にとっては真夜中。「かんべんしてくださいよ」と言ったんだけど、「いや、すぐ来たまえ。来るべし」ときかないの。しょうがないから後楽園まで行きました。そうしたら、ボディビルやってるの。それで、「どうだ」と言うから、まだあまり筋肉はついていなくてそれほどたいした身体になってはいなかったけど、私、ほめました(笑)。
 すると、また私の着てるものをぼろくそに言うんですよ。まあ、私も大して地味なものを着てませんでしたけど(笑)。で、「でもあなただって、ほんとうはしたいおしゃれや、お召しになりたいものが他にあるでしょうに。どんなおしゃれをなさりたいの? 何を着たいの? ほんとうのことをおっしゃいよ」と聞いたら、もじもじとジーンズと革ジャンを着たいとおっしゃるじゃありませんか。で、私は、御徒町まで一緒に行ったんですよ。ジーンズと革ジャンを買いに。
瀬戸内 じゃ、三島さんの最初のジーンズは、美輪さんと買ったのね(笑)。

瀬戸内寂聴×美輪明宏『ぴんぽんぱん ふたり話』集英社2003年

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