三島のコンプレックスに触れた
美輪 いや、ご自分はまだ背広にネクタイだったんですよ。あれは多分昭和三十三年(一九五八)ぐらいかな、新宿の「フクワ」で一緒にダンスを踊ったことがあるの。
美輪 そのときの三島さんも背広だったけれど、当時はずんどこズボンにパットの背広時代だから、肩から胸にかけれパットがいっぱい入ってたの。で、私が、「あら、パット、パット。三島さん、中身はどこにいっちゃったの? 行方不明だ、大変、捜索願いを出さなくちゃ」と言ったの。そうしたら、真っ青になって怒ってね。あの人、怒ると、こめかみにピーッと青い筋が入っちゃうの。それで、い津も冗談を言ったら、冗談で軽いジャブを返してくるのに「おれは不愉快だ、帰る」と言って、お金も払わないで帰っちゃったんです。
それで、私、ただパットだらけだから、「三島さんどこかへ行っちゃった」と言っただけなのに、そんな悪いこと言っちゃったのかしらと思ったんだけど、若さの残酷さでしたね。
瀬戸内 三島さんのコンプレックスに触れてしまったんですね。
瀬戸内寂聴×美輪明宏『ぴんぽんぱん ふたり話』集英社2003年
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