これが天才の目か
美輪 緑が丘のお家ですね?
瀬戸内 そうそう。普通の家ですよ。玄関脇に二畳から三畳の編集者が待つ部屋があって、そこにいれられて待っていたら、近くでトイレを流す音が聞こえてきたのね。そしたら、痩せて、貧相な男が出てきましたの。
瀬戸内 書生風の紺絣の着物を着て、細くて青白いのに、とても濃い脛毛が短い着物の裾から出てた。ねぎに毛が生えているみたいだった(笑)。
ただ、目が爛々としていて、それはもう、ぞっとするほどきれいで。
美輪 きれいだったでしょう。赤ちゃんみたいなの。
瀬戸内 目がきらきら光ってて中で燐が燃えているようで、私には金色に見えましたよ。暗闇の猫の目みたいに光ってた。これが天才の目かと思いましたね。
姿形は貧相だけれども、目はわぁっというほど美しくて、ほんとに感動しましたよ。
美輪 それで、眉毛から額にかけて、うぶ毛がそっと生えているのね。これがまた美しかった。
※緑が丘の家 三島は、目黒区緑が丘に、一九五〇年八月より、大田区南馬込の新居が完成する五九年六月まで暮した。
瀬戸内寂聴×美輪明宏『ぴんぽんぱん ふたり話』集英社2003年
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