なんて謙虚な人
美輪 あの人は、ほんとうに純粋で赤ちゃんみたいにきれいな魂の持ち主だったんですよ。
美輪 『紫の履歴書』の序文を書いてもらった後、六本木で一緒に食事したことがあったんですね。私がまず序文のお礼を言うと、三島さんは、「あんなに君は金に困っていたのに、よくおれのところに来なかったな」って、言うの。だから、私は、「物書きとしては及びもつかないけれども、歌や芝居で、いずれあなたと肩を並べるくらいのアーティストになろうと思っていた。でも、同じ線に並んだときに、過去に一度たりとも借りをつくっていたとなれば、どうしても一歩さがらなきゃいけなくなる。それだけは絶対したくないから、他の人のところへは行っても、あなたのところにだけは絶対行くまいと思った」と、答えたの。
そうしたら、三島さんは、きちんと居ずまいを正して、「僕のことを、そんなに買いかぶってくれて、どうもありがとう」って、頭を下げたの。冗談じゃなく、まじめな顔で、小学生みたいでしたよ。何て謙虚な人だろうと思ったわ。
瀬戸内 わかる、わかる。本気なんですよ。美輪さんの話を聞くと、三島由紀夫は、まだまだ誤解されているね。
瀬戸内寂聴×美輪明宏『ぴんぽんぱん ふたり話』集英社2003年
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