パブリック用の日記
瀬戸内 三島さんは、日記をつけてたでしょう。
美輪 でも、あの。日記はくせものでね。パブリック用の日記なんですよ。すべて作家の日記というのは・・・・・・。
瀬戸内 全部そうですよ。
美輪 作家の日記は営業用だから、プライベートなことは書かないの。自分だけにわかるように書いてあるの。それで、みんなに知らせたいこととか、知ってもらいたいことは、ある部分を増幅させたりして、書いてあるでしょ?
瀬戸内 そうです。『紫式部日記』なんて、そうですからね。
美輪 そうですか。
瀬戸内 ある晩、藤原道長が夜這いに来たことを書いてあるんですが、「私は絶対に開けなかった」とわざわざ書いてあるんです(笑)。だって、道長って時の最高権力者ですよ。これ、と狙った女、しかも女房なんて手をつけていいのが当たり前の時代なんですから、一度も開けなかったなんて。たとえ一回目は開けてもらえなくても、そのあと何回も行ってるに決まってるじゃないですか。だから、私は「三回目に紫式部は開けただろう」と言ってるの(笑)。
道長とそういう性的関係にならないと、あれだけの庇護はもらえなかったでしょ。彼は紫式部のパトロンですからね。それで、『源氏物語』ができたんですよ。
瀬戸内寂聴×美輪明宏『ぴんぽんぱん ふたり話』集英社2003年
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