殿下曰く
島地 アハハハハ・・・・・・
開高 ずいぶん前、わたしはバンコックで昔のチェンマイ王朝の殿下と仲良くなって、その別荘に招待されて、毎日ツバメの巣のスープなどをすすって、ハイビスカスを眺めながら暮らしていたことがある。朝は殿下が現地の新聞を読んでくれるんだけど、ある日、ゆうべバンコックのバーで日本の商社マンが、女にピストルで撃たれて死んだっていうんだな。その女は商社マンのガールフレンドだったが何かゴタゴタがあったんやろ。やにわにスカートをたくしあげると、ガードルからピストルを抜いて、パンパンッ。それで女はブタ箱に入れられたら、毒をのんで自殺を図ったそうや。それでわたしは殿下に訊いたのよ・・・・・・。「すると、こちらの女性はいつもピストルと毒薬を持ってるってわけですか」
島地 ちょいとヤバイじゃないですか。タイの女には手が出せないな、こりゃ・・・・・・。
開高 ヤバイのは、タイの女ばかりじゃないぜ、セニョール。それで殿下がいうのよ。一つ諺を差しあげる。「はたちまでの女は、自分を殺す。三十までの女は相手を殺し、自分も死ぬ。三十過ぎの女は相手だけを殺す」これをよく心して女性と接しられよ―だって。ヘェーと思って新聞見ると、その女が二十八歳なんや。
島地 相対死の年代に入ってますね。
開高健×島地勝彦『水の上を歩く? 酒場でジョーク十番勝負』集英社文庫1993年
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