霊の世界へのきっかけ
瀬戸内 そういう知的な合理主義者が、じゃあ、なにをきっかけに霊の世界を信じるようになったんですか。
美輪 ずいぶん前の話になります。(石原)裕次郎さんとマコちゃん(北原三枝)は、結婚する前、二人とも人気者だったから会社から圧力をかけられて、結婚できるかどうか、マコちゃんはすごく悩んでいた。そしたら、たまたま私のタンゴの先生が、アルゼンチンタンゴを教えているわりにはオカルトみたいな不思議なことが大好きな人で(笑)。私たちは、いい人なんだけれどあれさえなきゃねえって、軽蔑してたんですよ(笑)。それで、その方が、いい易者を知っているからと、紹介してくれたの。マコちゃんには「まあ当たるかどうかわかんないけど、気休めになるじゃない」といって、私のうちでみてもらったら、春過ぎたら婚約できて、秋過ぎには結婚できると占いに出たの。今までごちゃごちゃしていてまとまらなかったのが、そう言われたんですね。
でも、とのときは、まだ当たるか、当たらないのかわかりません。
瀬戸内 ええ、ええ。
美輪 ところがその易者が今度は、「北原さんはよろしい。問題はあなたにあります」と、私に向かって言うんですよ。私は、たしかに昔は苦労したけれど、「メケメケ」で世にも出ちゃってたし、そのときは飛ぶ鳥落とす勢いだったし、別に苦労はなかった。
それで、「なんですか」と聞いたら、易者は「あなたの顔の横に、天草四郎のような格好をした男の人がいて、後にはマリア観音が見えます。それからあなたのうちは日蓮宗ですね」と言うんですよ。「いいえ、うちは浄土真宗で、南無阿弥陀仏ですよ」と言ったら、「いや、あなたの体に『寿量品第十六』というお経がかかってる」と、言い張るんですよ。
瀬戸内 法華経ね。
美輪 ええ、でも、私はそのときはまったくそんな言葉を受け入れることはできなかった。なあに、うろんなこと言いやがる。こいつはやっぱりインチキだなと思って、「ああ、そうですか」って、お帰り願っちゃった。マコちゃんにも「まあ、あいつはインチキだったけど、しょうがないや。でも、気休めにはなったでしょ」と言ってたんです。
ところがその後、大坂の北野劇場、あそこが今のように映画館じゃなくて劇場だったころ、私、「夏の踊り」で行ったんですよ。そのとき、芦屋にいる友だちの家に遊びに行ったんですけど、お食事をいただいてるとき、真言宗のお坊さんがいらしたんです、供養に。そしたら、私の目の前で、そのお年を召した方の顔が突然震え出したんですよ。
瀬戸内 へえ・・・・・・。
美輪 これはおかしいと思ってね、中気なんかかしら? って。それで、私、「おかげんでも悪いんですか」と聞いたところ、「いやいや、お宅の仏が出ておるんじゃ」って。
瀬戸内 そのお坊さんは美輪さんの仏様に感応なさったのね。
美輪 それで、「はあ?」と聞いたら、「いや、仏が出ておる。これは切支丹だと思うけど、胸にクロスをかけた若武者で、後に観音菩薩がござっしゃる」と言うんです。「あなたは、これを供養するために生まれてきたんだから、よく供養なさい」って。
その前に東京でも同じようなこと言われてたから、「そんなばかなことありますか。じゃあ、どうすればいいんですか」と聞いたら、「東京で言われたのなら、その人にいろいろ聞いて、言われたとおりにやりなさい」と言われて帰ってきて、それで追い返した易者にまた来てもらったんです(笑)。
瀬戸内寂聴×美輪明宏『ぴんぽんぱん ふたり話』集英社2003年
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