現場検証が大事
「本日はどうなさいましたか?」
「最近、頭痛が続いて困っています」
「吐き気はありますか?」
「はい時どきあります」
「何か思いあたることは?」
「は? さあ、とくにありませんが」
「お仕事はお忙しくありませんか?」
「忙しいですが、以前からずっとそうですから」
「ご家族に同じような症状の方は? ご両親が脳梗塞とか?」
「父も母も健在です」
「忙しいと緊張して肩こりから頭痛になりますよ」
「あの、肩こりはしませんが・・・」
このあと、お酒とタバコの質問があり、過去に大きな病気をしたことがないかきかれ、そうこうするうちに七分程度の面接は終わってしまいました。こちらとしては、頭がどのように痛くて困っているのか、ほとんどお伝えすることができなかったのです。
「問診」の目的は診断のための情報収集です。「医療面接」と表現する時には、患者さんと医療者との信頼関係を重視し、そのうえに成り立つ相互の情報収集もしくは情報交換が目的になります。ですから「問診」が「医療面接」の中に含まれるわけです。ところが、この点が誤解されているように感じることがあるのです。医療面接実習だから診断をつけなくていい、だから症状についてはテキトウに聞いておけばいい、あとは検査でわかるから・・・・・・という具合になり、上記のようなやりとりが展開されるのではないでしょうか。
しかし、これでは患者さんに何が起こったのか、まったく見えてきません。頭痛と一口にいっても、どこがどんなふうに痛いのか、吐き気だけは「当たり」ましたが痛い時にどのようなことがあるのか、現場を歩いて検証する必要はないのでしょうか? 少なくとも情報がほとんどないうちに犯人探しにばかり目がいってしまい、現場で得られる情報がもっとあるはずなのに推理が一人歩きして、大事な点が抜け落ちたまま、似て非なる別人の誤認逮捕までしてしまう危険さえあるように思いますが、いかがでしょうか?
しかも、当事者があなたの目の前にいるのです。いろいろ伝えたくてうずうずしています。当事者である患者さんが話されることは、事件の解決に最も有力な情報です。思い込みで話を閉ざしてしまうのではなく、患者さんが自由に話せるような工夫をしてください。それともまだ、証拠のない推理と検査に解決の方法を見いだすのでしょうか。
佐伯晴子『あなたの患者になりたい 患者の視点で語る医療コミュニケーション』医学書院2003年
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