温風のような笑い
「それこそ人生の醍醐味じゃないですか」 悲劇のヒロインになりきっている最中、なぜかどうでもいいものが視野に入ってくることはないですかと訊かれた。
「たとえば、男から別れ話を切り出されて、涙で目の前が曇りそうになっているときに、たまたま視界の端をヘンな人が横切ったりすると、もう悲劇のヒロインではいられない。自分自身も滑稽な風景にハマっている一人にしか感じられなくなる」
人を絶望から救い出してくれるのは、シリアスの海に溺れているときに吹きかかる温風のような笑いだと野中さんはいう。
「死にたいくらいの気分のときでさえ、日常の取るに足らない、ささやかな物事がふいに希望へとスイッチを切り替えてくれる。そういう人間のもつ生命力のしぶとさをリアルに描けたらいいなと思っています」
週刊図書館/野中柊「ガール ミーツ ボーイ」『週刊朝日2004.11.5』
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