アメフトが導入した社会主義
NFLは1993年以降、サラリーキャップ制度が徹底している。今季だと、全球団がサラリー総額を8060万㌦以下に抑えねばならない。アメリカンフットボールは約50人の大所帯、激しく身体と身体を衝突させ合う格闘技だ。小さなけがなら毎試合、ほとんど全員がするし、しばしば大きなけがで戦線離脱となる。
だが、制度上、MLBの野球のニューヨーク・ヤンキースのように公式戦途中に大物選手を2人も3人も補強してくることは不可能。それゆえ、シーズンに入って、けが人続出のチームは苦しい立場になるし、逆に前評判が芳しくなかったチームでも、うまくまとまり、けがが少なく乗り切れれば、調子に乗って快進撃ということも起こり得る。絶対的に強いチームもなければ、絶対的に弱いチームもないのである。
過去5年のスーパーボウルの結果が顕著だった。99年の優勝チーム、ラムズ、00年のレーベンズ、01年のペイトリオッツは誰も優勝候補に挙げていなかった。去年の準優勝チーム、パンサーズも、01年1勝15敗、02年7勝9敗からいきなり公式戦11勝5敗で、プレーオフを勝ち進み、スーパーボウルに出場したのである。
全米のNFLファンが、今年こそ自分の贔屓球団がシンデレラチームになる、と期待している。おかげで、どの球場でも満員売り切れ、TV視聴率も高いのである。(中略)
32球団のオーナーたちは、「われわれは32人の資本主義者の集まりだが、リーグ運営に関しては社会主義に賛成している」と言う。
選手組合の代表ジーン・アップショウは、「我々は、オーナーたちを敵とは見ていない。ビジネスパートナーだ。我々の戦う相手は、他の娯楽産業で、映画や音楽産業に負けないよう、いかにプロフットボールを魅力ある商品として消費者に提供していくか知恵を絞っている」と話す。
93年にサラリーキャップが導入されたとき、選手の間ではサラリー額の抑制につながると反対の声があった。だが、この10年間で観客動員数は増え、TV放映権料が上がることで、キャップの上限は初年度の3100万㌦から8060万㌦と、2・5倍以上になっている。NFLでは、TV放映権料、チケット売り上げなどによる収益の65%から70%が選手のサラリーに充てられることに決まっているからだ。そして、この期間に四つの新設球団が参加し、チーム数は28から32に膨れ上がっている。
奥田秀樹(スポーツライター)/我々の戦う相手は、映画や音楽産業だ 好況「アメフト」が導入した「社会主義」/『YomiuriWeekly2004.9.19』
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