洪水神話
フロイトの考え方を、もう少し引き伸ばして、ユングが<集合的無意識>の世界といっているところまで拡張してゆきますと、神話の世界になります。
日本の神話は、複合型の神話ですけども、日本の神話で基本的に思想を決定しているのは、南方の東南アジアとか南中国とかマレーとか、そういうところ一帯に流布されている洪水神話です。つまりあるとき洪水があって、残されたのは、アダムとイブみたいですけど、兄と妹だった。あるいは姉と弟だったでもいいんです。つまり異性のきょうだいだった。その異性のきょうだいが結婚して、だんだん人間の共同体ができてきたんだという洪水神話が、日本の神話を決定しています。
例えばアマテラスとスサノオという形で、姉弟が初めいまして、その姉と弟を基軸にして、姉は天上を支配し、弟は地上を支配するというようなことが、日本の神話の大きな核心になっています。神話的世界、あるいはユングのいう<集合的無意識>の世界に拡張していっても、日本の神話の基層にあるのは、この構造です。これは、家族内における兄弟姉妹の関係を相当大きくみなければならないことと関連するとおもいます。
吉本隆明『心とは何か』弓立社2001年
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