相続税100%
橘木 野口悠紀雄先生と対談をされて、「相続税一〇〇パーセントにしろ」と言われたでしょう(笑)。私はお二人の意見が一致したのに感激したのです。二人とも、すごいことをおっしゃっている、と。当時、私は「相続税一〇〇パーセント」なんて言う強心臓をもっていなかったので・・・・・・・。(笑)
和田 僕は本業が老年精神科医で、高齢者を担当にしていますので、いろいろな例を見てきました。これまでは、相続とは、親の介護に対する礼みたいなものだったと思うんです。ところが今は、親が死んだら、それまで一回も見舞いに来なかった人までがゾロゾロ集まってきて、喧嘩が始まったりする。平等相続ですから介護をしようとすまいと関係ないんですね。そこで、バイオロジカルに子供であるだけで相続の資格があるのか、と考えるようになったんです。
橘木 これは非常に面白い画期的な提案でしてね。「消費税で福祉の財源を負担するよりも、相続税で負担しろ」と。チマチマ消費税で数パーセント上げるということを議論するよりも、ドーンと相続税を取れば、日本の社会保障の財源は相当程度まかなえますからね。しかし、日本社会に受け入れられるかどうかはわからないですけどね。(笑)
もう一つ、この案に納得がいく理由があります。二十歳くらいになれば、いずれは親の財源を相続できると、人は予想できますよね。すると、親の財産をもらえそうな人とそうでない人の人生行動は、違ってくる。私は、人生はヨーイドンでみんな一緒にスタートするのがフェアだと思いますので、相続税一〇〇パーセントの案が出てくると。
和田 現実には、相続税を一〇〇パーセントにしても、会社の社長の子は社長になれるわけですよ。それで機会は十分不平等なわけですから、せめて財産ぐらいはあきらめろ、というふうに思うんですね。第一、親が死んで株が相続できなければ、追い出されるような社長が、相続の力で生き残るようでは企業の競争力がなくなってしまう。
橘木俊(京都大学大学院経済研究科教授)×和田秀樹(精神科医)/日本をアメリカ型「非福祉国家」にしないために『中央公論2004.8』
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