ページの間に挟まれる秘密
世の中には、実に恐ろしい物を栞がわりにする人が存在するのだ。覚悟はよろしいか?
まずは、陰毛。
文庫の「天(ページの上側)」の部分から、何本もの縮れた黒い毛が、ぴょこぴょこと覗いているのだ・・・・・・! 買い取った本の手入れをしようとページを開けた私は、「ひぃっ」と悲鳴をあげて、その本をゴミ箱に捨てた。
いったいなにをどうしたら、あんなものを栞にしようという発想が生まれるのか。わざわざ抜くわけでしょう? 痛くないのか? わからない・・・・・・。そしてその本を、平然と古本屋に売る神経がまた、わからない・・・・・・。
次に、鼻○ソ。
もう、汚い話でホントにすいません。私もなるべくならこんな話はしたくないんだが・・・・・・。
これまた、古本屋で作業中のことだ。文庫のページが開かない。なんだか糊のような、ゴロゴロした固形物であちこちのページがくっついちゃってるのだ。「なんだ?」とバリッとページを開いてみた私は、糊の正体に気づき、「ぎいやああああ!」とまたもや叫んだ。
なんという不逞な輩がいるのであろうか。本に鼻○ソを挟むなんて! 紐の栞がついてんだろ、文庫なんだから。おとなしくそれを使ってくれよ、頼むよ。だいたいこれじゃあ、読んでる途中で前のページを読み返すこともできないじゃないの。「ふくろ綴じ」を自分で勝手に作るなっつうのー!
ぜぇぜぇ、ふぅふぅ。つい、取り乱してしまいました。(中略)
読書は「個人的な楽しみ」だが、読書に使う栞は、もっと個人的な領域に属する。たとえば、「友人はどんな本を読んでいるか」は知っていても、「部屋で本を読むときになにを栞に使っているか」については、多くのひとがほとんどなにも知らないのだ。
栞・・・・・・それは、ページのあいだに挟まれていく秘密。
三浦しをん/本のできごころ『i feel』2004.NO.29
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