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2004.07.08

海派と山派

旅人には海派と山派がある。私自身は、かなり頑固に海派である。砂漠にも惹かれるが、これも海のバリエーションの一つと言っていいだろう。

 どちらも掴みどころがないほどに広くて深く、その彼方に何があるか分からない。だから、先へ先へと進みたくなる。気持ちが、常に外に向いている旅である。
 山には頂上があり、とりあえずゴールが見えている。そこまでのプロセスを引き算しながらの旅は、どうしても気分が内に向く。山派の多くは、実は風景など見ずに自分の足元を見ながら歩いている。そんな所にまで出かけていって自分自身を発見してどうする。もっと世界を見ろ、旅を楽しめ―概ね、これが海派の主張である。
 それにしても、何故、人は旅に出たがるのだろう。本書のエピローグで、著者と旅を共にしたロジャーが言う。
「やっと、クックのことがわかったよ」
 ロジャーは三本目のシャルドネの栓を抜きながら続ける。
「逃げ出したいから、旅を続けていたのさ。それで、人生の問題がすべて解決できる」
 至言である。私も、だから旅を続けている。
戸井十月「今週の三冊」/『週刊文春2004.2.5』

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