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2004.07.02

子宮は交感神経支配

子宮の自律神経支配は交感神経支配のみだと言って、研究仲間の川田信昭医師が感動していた。子宮は交感神経のみの支配を受け、その抹消から放出されるノルアドレナリンの刺激を受ける。そして子宮のそれを受け止めるレセプター(受容体)はβ-adrenergic(βレセプター)のみと言う。私もいっしょになって感動していたが、その理由は以下のようなものである。

 妊娠中は胎児が大きくなり、しだいに多くの栄養や酸素を必要とする。このため母親は交感神経優位になり脈拍をふやして血液を子宮に送り込む。この刺激がβ-adrenergicゆえに子宮筋を弛緩させ胎児を流産しないようにしていたのである。
 もし、子宮が腸管と同じように副交感神経支配をも受けていたら、御飯を食べて腸管の筋肉が収縮するたびに、子宮も収縮し胎児が外に出される(流産)危険にさらされるのである。
 このように自律神経の支配は特殊な場所では不思議な分布をしているが、生物が生き続けたり子孫を殖やすための巧妙さが隠されている。
 他にもある。ほとんどの分泌現象は副交感神経支配下にあるのに、発汗だけ(特に、さらさらと大量にでる汗)は交感神経支配を受けている。しかし、末端から分泌されるものは副交感神経伝達物質であるアセチルコリンである。これぞ、この世の不思議である。その結果、筋肉の使用と興奮によって生じた熱を外に出すために発汗を利用するみごとな仕組みが働く。
 目が回るような巧妙さであり、進化からみると私たちの知らないある必然性があるのであろう。母乳は汗の進化したものであり、母乳分泌を支配するプロラクチンは、爬虫類では電解質調節ホルモンであったという。汗にはそもそも多量の電解質や少量の蛋白質が含まれている。生物の仕組みは、こちらの頭がおかしくなるくらい巧妙である。
安保徹『医療が病をつくる 免疫からの警鐘』岩波書店2001年

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