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2004.07.31

流政之

彫刻というのは、仕事場でいろんな男衆や、職人たちとかかわることになる。その時、「腕を組むな、ポケットに手を入れるな、しゃがむな」というのが「流三則」。私たちの仲間ではね、腕組むやつとはつきあわない。腕組むといい洋服が皺になる。絶対組んじゃいけない。だから君は生涯組んじゃいけない。

 これをやると男は弱くなる。腕を組むっていうのは、否定を表していることになる。拒否になる。日本人はすぐ腕組みするけど、世界中でいやがられる。強そうにしてるつもりなんだろうけど、マフィアにポーンと叩かれれば終わりだよ。手がでない。だから、すごいヤーさんは手がいつでも動けるように、腕組みなんてしない。流政之がえらいのは、絶対に腕組まないってことだ。(中略)
 私の場合、アトリエは「旅」だな。不安定なところに身をおかないと、レーダーが弱い。自然にある中からぱっと掴む。ただね、こっちの感度が悪いとわかんない。私は「地縁」で作品を作ってるわけなんだけど、それを見つける方法は、風であったり、その街の男、女。人間はかなり深い道だ。西洋化してしまって、街が変わったというけれど、人間は変わっていない。風土っていうのは、男からいえばいい女。それと食事だな。だから、日経済聞の「私の履歴書」で書いた「おいしいおかずといい女」っていうキャッチフレーズは非常に軽い言葉だけど、ほんとはすごい言葉なんだよね。色気はやっぱり、男にとっても女にとっても命でね。それを立体的に感じ続ける時と、それを乗り越えて精神的に感じ続ける時がある。私は宮本武蔵よりも色っぽい男だよ。宮本武蔵は女に役にたたなかったけど、私は役にたつ。そこが決定的に違うところだろうね。宮本武蔵は絵も上手かったし剣のほうも達人だったけど、私よりは女に強くなかった。そのうち斬り殺されるだろうけど、今のところは俺の方が上だな。あー、旨い。お前、腕組むなよな。礼節とは美しく食べることだ。

流政之「おいしいおかずにいい女」/後藤繁雄『独特老人』文藝春秋2001年

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