本能は美しい
ほんとの表現というのは肉体なんだ。生々しく消化できたとき、人に訴える力がある。
「五・七・五のリズムで作ると、誰だって気持ちいいやね。ところが、自分の人生を歌うということは、若い連中にはできない。人生を歌い込めるのは、どうしても中年以降になる。そこが違うわけだ。それまでは、なんとなく面白くて作っているが、作ることがほんとの喜びになるのは中年からです」
人生俳句には体験だけの集積だけでなく体験を消化する能力が必要だが、その能力は俳句を作ることによって倍増するという。
「短い形式だから消化しやすい、しかも、消化できるようになる。これがいいんだ。中年の人が俳句をやることで、だんだん肉体にめざめていってくれればいい。ほんとの表現というのは肉体なんだ。俳句をやりながら体験したことを消化できたときに人に訴える力がある。作る喜びがある。変な理屈をこねて自分の人生を割り切るのは、喜びにならないですよ」
最後に、これから俳句を始めたい人へ、著者からのメッセージ。
「とにかく五・七・五に乗っかって書く。なにがなんでも季語を入れなきゃとか、切れ字がどうだとか、そんなことはいいんだ。どんどん気軽に作る。そうしているうちに、50年生きている人は体験が消化されて、句に深みが出るよ」
金子兜太/著者からのメッセージ『YomiuriWeekly2004.8.1』
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