血圧を水圧に換算すると
病院に行くと、「最高血圧は一二〇で、脈拍は七〇です。ハイ、大丈夫です」などと言われます。ふつうは、それでホッとしてしまいますが、じつはこの「血圧一二〇、脈拍七〇」というのは、体内で心臓が一生懸命に働いてくれて、たいへんな労力を使って保たれている数値なのです。
心臓は、一回の収縮でおよそ四〇~五〇ミリリットルの血液を体内に送り出しています。送り出す圧力は、最高血圧(収縮期の血圧)が示しています。最高血圧が一二〇㎜Hg(ミリメートル水銀柱)だとすると、水銀柱を一二〇ミリメートルの高さまで押し上げる力で送り出していることになります。
水銀柱ではイメージが湧きにくいので、水に換算してみましょう。水銀の比重は水の約十三・六倍ですから、血圧一二〇mmHgの場合は、一六三センチメートル(一二〇ミリ×十三・六)の高さまで水を吹き上げる力で、血液を送り出していることになります。つまり、心臓のポンプが動くたびに、重力に逆らって一・五メートルくらいの高さの噴水を上げているような感じです。
これが「いかにたいへんな働きか」ということを実感するためには、手を使って、同じ作業をやってみるといいと思います。子どものころに、お風呂で両手を重ね合わせて水鉄砲のようなものをつくり、水を飛ばしてた経験がある人もいるのではないでしょうか。それをやってみるとよくわかります。
両手で水を挟み込むようにして、ポンプのような形をつくると、四〇~五〇ccくらいの水が手の中に入ります。両手をギュッと締めて、勢いよく一・五メートルくらいの高さまで水を飛ばしてみます。一回やるだけでもかなり力を必要とします。心臓はこの作業を一分間に六〇~七〇回程度、脈拍の回数分だけやってくれます。
一分間に七〇回、一メートル半の高さまで自分の手を使って水を飛ばしてみれば、たいへんな労力を要することが実感できるはずです。おそらく一分も経たないうちに、ぐったりと両手が疲れてきてしまうでしょう。こんなたいへんな働きを、心臓は、頼みもしないのに一日に一〇万回ずつ、八十年間くらい続けてくれるのです。
南淵明宏『心臓は語る』PHP新書2003年
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コメント
「心臓は語る」購入してみました。面白いです。
どうもありがとうございました。
投稿: fu_r | 2004.07.17 17:49