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2004.05.11

焼肉史

焼肉の歴史を探索しましょう

 「乞食のように生きてきた彼らは、日本人が食べない牛の内蔵を拾って食べたり、買ったりするようになったという。焼肉は職業として始められたのではなく、彼らの食生活から始まったものである。つまり食生活から商売に発展した焼肉料理が在日韓国人の代表的な料理になったのである」
 これは、焼肉文化について書かれた数少ない論文である「在日韓国人の焼肉に関する文化人類学的考察」(『社会人類学年報vol6・一九八〇』所収、崔吉城 柳尚煕共著)の一節で、その中に面接調査をした一九一九年(大正八年)生まれのM氏という焼肉店経営者の話が出てくる(私が調べたところ、このM氏は十一年前に他界していた)。M氏の話では、東京の焼肉は品川の屠蓄場の近くで始まったとされている。屠蓄場から捨てられる牛の内臓などを在日韓国・朝鮮人たちが拾って料理し、残飯や焦げた飯や濁り酒(マッカリ)などと一緒に、同朋や日本の肉体労働者たちに振る舞ったり売ったりした。内臓料理を初めて食べた日本の労働者たちは、思いの外うまいことに驚き、値段の安さと相まって、これを好んで注文するようになったという。
 このような形の焼肉が日本で始まった時期を、筆者たちは「終戦前後頃」と推定している。
 これは、私が取材した、在日一世を祖父に持つ焼肉店店員の話とも符号する。
 「爺さんがよく言っていたのは、戦争中、食いもんのない日本兵がうちらの部落に来たとき、豚の内臓を食わせてやったら、涙流して喜んだって。あの頃、日本人は内臓の食い方を知らなかったんだよ」
 日本人のあいだに焼肉が広がっていく出発点が、焼け跡闇市の露天や掘っ立て小屋にあったことは、ほぼまちがいあるまい。
野村進『コリアン世界の旅』講談社1996年刊

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