再生医学
再生医学は、いうまでもなく患者のためにあり、臨床医学のみでなく、基礎医学と医療工学の知識や技術が必要です。
再生医療が実現すると、臓器移植や人工臓器の抱えている多くの問題が解消され、まさに夢の医療となります。しかし、その実現には多くの障壁が立ちはだかっています。生体肝移植のために切除された残りの肝臓からは、手を加えなくても肝臓組織の再生がスムーズに起こります。しかし、骨折した場合には骨の再生が進みにくい場合があります。角膜には上皮と内皮があり、その上皮は容易に再生しますが、内皮は再生しないといわれています。なぜこのように再生のしやすさに大きな差があるのかは、まだ解明されていません。生物には多くのブラックボックスがあります。「これらが解明されなければ、前に進めない」などといっていたのでは、患者に待ちぼうけを食わしたしまいます。大胆な想像力を働かせて敢然とチャレンジする勇気が必要なのです。(中略)
もしも、すべての組織の再生が可能になれば、いったいどのようなことになるのでしょうか。秦の始皇帝らが探し求めた"不老不死"の不老の夢が実現するのでしょうか。少なくとも脳組織の再生を試みない限り、そのような心配は杞憂に終わるでしょう。それよりも、減った精子を増やすために精巣を再生するなどの課題がいくらでも待ち受けています。再生医療も、医学とか工学の枠を越えてしまうようになると、その進路を正すアセスメントが不可欠となります。その日が案外早くくるかもしれません。あるいは先の先かもしれません。いずれにしろ、再生医療という研究分野は誕生してから日が浅く、わが国のレベルは欧米と比べてほとんど差がありません。まさに同じスタートラインに立っています。
筏義人『再生医学―失った体はとりもどせるか 移植、人工臓器につづく新しい治療』羊土社P120-122
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