人中でござる
サカナのエラは筋肉を持っているが、その筋肉が一部、われわれの顔面の表情筋になった、と考えてもいい。
上唇の中央には、縦の溝がある。これを人中と言う。
人中とは、もともと中国語である。これがなぜ人中か。これより上の穴は、すべて左右が対になっており、これより下の穴はすべて一つしかないからである。人中より上の穴とは、目、耳、鼻。下の穴は、口、尿道口、膣、肛門。
「なぜ」という質問に対して、こういう答をするのは、なんだかサギみたいだが、中国人というのは、えてしてこういう説明をするのである。
人という字を考えると、上は一本の棒みたいだが、下は二つの棒に分かれている。だから、人中は、まさに人の中央なのである。なぜなら、対象部分と、非対称部分を分ける位置にあるからである。そんなことを言うが、上下が逆ではないか。あとは中国人に聞いてくれ。
養老孟司『からだを読む』ちくま新書P32
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